こんにちは燦です。
中小企業診断士1次試験の初日一教科目、一発目の問題といえば⁉
経済学の経済情勢とか経済統計とかの問題じゃな。
そうです!正解出来てますか?
当てたいのはヤマヤマだけど勉強しようもないし、まぁ当たればラッキーくらいかな。
政治経済にあまり興味ない人も多いですしね。でも極力正解に近づけることは出来ます!
どうやって?裏技的な?
いえ、知識と経験とグラフ読みの総合技ですかね…。
面倒くさそう。
たまたま正解とかヤマ当てするとかよりも、経済指標をしっかり読める力を付けて頂きたいのです!
どうやって?
説明や講義は要りません!過去問を全部振り返ればなんとなく見えてきますので早速全部やりましょう!
(うわー)
■こんな人にオススメ
★経済学のマクロ統計問題で極力8点を取りたい方
★経済知識や経済統計の読む力を付けたい方
★経済を少しでも面白く感じたい方
問題予想はこちら▲
過去問をひたすら解説していきますので、それで出題傾向やグラフの読み方や経済知識を身に付けていきます。その前に最低限必要な基礎知識だけ把握しておきます。
これだけわかってればなんとかなる…!
なお長ったらしい問題文は省略していたりします。
1.平成19年過去問
第1問 GDP成長率の説明
答え イ
ア ✕
好景気期間に〇〇景気と名付ける風潮があります。1960年代後半はいざなぎ景気ですね。神の名前を付けたりします。こんなのは知らなくてもいいですが、2002~2008年(いざなみ景気)に少し景気が良かった期間があるというのは知っておくとよいです。リーマンショック前のお祭り期間です。
イ 〇
このグラフで一番特徴的な部分です。GDPデフレーター(物価指数)が上がりGDP成長率は下がっています。普通は経済成長と共に物価が上がります。これをインフレーションといいます。逆に経済が低迷して物価が下がることをデフレーションといいます。ところが最悪なことに経済が低迷しているのに物価が強制的に上がることがあります。これがスタグフレーション(コストプッシュインフレ)です。物価が上がる要因は輸入品(エネルギーや飼料など)の高騰です。その原因は主に戦争です。戦争により原油や天然ガスなどがまともに入手出来なくなるからです。国内の経済事情とは無関係に輸入価格は高騰します。1970年代のオイルショックが有名ですが、2022年~もまさにロシアウクライナ戦争によって世界中でコストプッシュインフレが起こっています。最近のトレンドでもあります。
ウ ✕
ブレトンウッズ体制が崩壊したのは1971年です。世界の貨幣がGOLDとドルとの交換を保証されていましたがそれが保証されなくなりました。そこから円は360円→240円/$くらいまで動きました。1985年のプラザ合意を受けて240円→100円/$くらいまで円高が進みました。ただ日本経済が本格的に低迷し始めたのは基礎知識にあるように1997年からです。1980年代はまだバブル景気真っ只中です。
エ ✕
名目と実質の捉え方が逆です。この関係は知っておく必要があります。
名目 / 実質 = 物価倍率 です。あるいは率にするなら
名目up% - 実質up% = 物価up% です。
※GDPデフレーターは物価指数
とにかく名目が上側です。(目は顔の上側にあると覚える)
仮に数字を入れると
名目120 / 実質100 = 物価1.2倍
名目20% - 実質0% = 物価20%up となります。
名目はスーパーの値札価格みたいなもんです。牛乳の価格が100円→120円に上がると名目価格は20%upしている。だけどもし世の中の物価全体が20%upしていれば給料も20%upしているはずなので、まぁ牛乳の値上がりは実質0%upだよねって感じです。
数式からして物価が下落している(0.9倍とか)と名目より実質の方が多いということです。(名目90/実質100 = 物価0.9倍)
第2問 正規雇用・非正規雇用
正しい選択肢を2つ選べ
答え a,d
a 〇
労働派遣法などの規制緩和によって非正規雇用の数が増大しました。
b ✕
正規雇用と非正規雇用では明確な収入格差があります。
c ✕
ニートやフリーターが非正規雇用になりやすいです。
d 〇
そうです。むしろ企業が人件費を削減するために、非正規雇用を利用します。
2.平成20年過去問
第1問 GDPの定義
答え イ
A 事後的
観測上やタイムラグで多少のズレが生じるので差分を在庫投資や修正分などとして一致させます。
B 付加価値
GDPは生産付加価値の合計でもあります。中間生成物は鉄鉱石や原油などの原料系です。これは買ってきているので日本の生産付加価値には入りません。
C 国内総支出
国内で使用された金額の合計でもあります(=全員の収入の合計「国内総所得」でもある)
D 国内純生産
固定資本減耗は減価償却費のことです。これを抜くと純生産と呼びます。
第2問 このグラフはどれ?
答え ア
ア 〇
家計貯蓄率がどんどん下がっています。このグラフで勘違いしてはいけないのは家計の貯蓄額は増えていっているということです。ただ溜まるスピードが鈍化しているということです。(0%を下回ると貯蓄額も減っていきます)
この主たる原因は高齢化です。高齢者は貯金を削りながら生活しますので貯蓄額は減っていきます。なので高齢者の割合が増えると国民全体の貯蓄率は下がっていきます。
イ ✕
製造業が減りサービス業の割合が増えることは先進国ではあり得ますが(ペティ=クラークの法則)、11%→3%に減る(1/3に減る)なんてことはあり得ないですし、製造業がGDPの3%しかないなんてことはあり得ないです(20%くらいはあります)
ウ ✕
財政構造改革とは政府支出を削減することです。確かに政府支出は削減方針にありますが、それでも1/3に減らすなんてことはないです。そんなことをすると暴動が起きます。
エ ✕
日本の輸出依存度は10~15%程度です。若干あり得そうなグラフですが、海外は基本的に経済成長していますので原因がおかしいです。特に2005年あたりは輸出が好調でした(いざなみ景気)。
第3問 このグラフを説明するものはどれ?
答え エ
ア ✕
給料が5%上がって、物価が3%上がったなら、実質賃金は2%上がっています。
イ ✕
デフレにより物価が下落していますが、それ以上に給料が下がっています。これがデフレの恐ろしいところです。つまり実質賃金が下がります。
ウ ✕
オークンの法則は、経済が2%悪化すると失業率が1%増えるみたいな経験則です。実質賃金が硬直的であるということは物価と給料がピッタリ一致することです(上下するのはいい)。グラフ的にそこまで一致はしていないので✕です。実際は物価の下落以上に給料が下落し実質賃金が下がっているので(そんな給料じゃ働けない!という)非自発的失業者がオークンの法則以上に増加している可能性があります。
エ 〇
フィリップス曲線は物価と失業率が反比例する法則です。景気が良い→物価が上がる→失業者が減る。あるいは景気が悪い→物価が下がる→失業者も増える。ってことです。グラフは物価と失業率が逆の動きをしているので〇です。
※オークンの法則やフィリップス曲線の言葉を知らなくてもグラフをきちんと読めれば正解は可能です。
3.平成21年過去問
第2問 労働市場とグローバル化
答え エ
A
労働集約財とは人間の力に頼る業種のことです。農作業、サービス業、士業などがあたります。食品でもサービスでも労働力でも需要が旺盛になると輸入が増えます。過剰になると輸出が増えます。日本は少子高齢化により労働力不足気味なので労働力の輸入が増えます。逆に外国は労働力の輸出が増えている(出稼ぎみたいなやつ)というグラフなので、日本もそれを受けいれている構図です。
B
安価な労働移民を受け入れると当然国内の賃金がそれにつられて下がります。
以下蛇足
また異文化の衝突などで治安の悪化も(事実として)起こります。なので安易に受け入れない規制があるのですが、その規制が日本でも緩和されました。完全に規制フリーになったのがEUであり、フランスの黄色いベスト運動やイギリスのブレグジット、労働者の暴動、政治の右傾化支持などは基本的にそれが原因です。規制緩和により労働派遣業者はそれで大いに儲かりました。労働人員だけに頼らずに教育、設備、技術投資による供給能力の増加が出来れば生産性の向上や経済成長に繋がりますので、特定の事業者を儲けさせる安易な規制緩和だけではなく総合的に政策を検討する必要があります。
第3問 各要素における中小企業と大企業の依存度
正しい選択肢を2つ選べ
答え b,c
a ✕
民間消費が落ちているので所得が増加するわけがないです。誰かの消費と誰かの所得は表裏一体です。公共事業の縮小が景気にマイナスに働くのは正しい。
b 〇
非正規雇用は固定費から変動費化出来るので不況時はコストダウンになります。
c 〇
所得が伸びないと、将来に備えて貯蓄しようとする心理が働き、消費を抑制する傾向があります。
d ✕
労働市場が逼迫すると賃金上昇圧力は働きますが、非正規労働者が増加すると下落圧力となります。家計部門の貯蓄は増大してはいますが、増加率は下がっています。
※グラフを読むというより知識を問うような問題でした
4.平成22年過去問
第1問 GDPの内訳(支出面)
答え エ
まず「民間消費支出」はGDPの大半を占めます。
日本は内需大国であることがわかります。
※輸出立国ではありません。
A:
まず、4つのグラフの中で特徴があるのはAです。2002年~2008年にかけて増加しました。これが小泉政権期の‟いざなみ景気”を支えた要因の「輸出」です。
輸出-輸入の差額である「純輸出」が増えるとGDPも増加します。
B:
輸出と似たようなグラフが輸入です。輸出と違い増えていません。輸入量は国内の経済活性度(景気)か輸入単価に連動します。国内だけの景気をみると大して上昇していないことがわかります。
C:
黒▲のグラフが民間住宅・設備・在庫です。つまり「民間投資」です。バブル崩壊後(1990年頃)からギューンと下がっていることからわかります。
D:
白△が公的需要です。つまり「公共投資」。民間投資と逆の動きで補填的になっている様子がわかります。民間の調子が悪い時に景気を支えるのが政府の役目です。
ただし小泉政権期で公共投資は「構造改革」によって減らされました。グラフをよく見ると下がっているのがわかります。
にもかかわらず景気が良かったのは輸出増のおかげです。なぜ輸出が良かったのかというと、アメリカの住宅バブルの恩恵によるものです。
ただしサブプライムローンというガバガバの住宅ローンによる砂上の楼閣のような幻の需要だった為、2008年にそのバブルがはじけます。これがリーマンショックへと繋がります。
第2問 各国の家計貯蓄率
正しい選択肢を2つ選べ
答え ア
何個か前の過去問にあったように家計貯蓄率が下がっているのが日本です。原因は高齢化です。この手の問題でB,C,Dのような中途半端な特徴のないグラフが答えになることはほぼありません。問題として成立しないからです。最も特徴のあるAが答えです。唯一マイナスになっているEと迷うかもしれませんね。
日本がデフレであることを踏まえると、基本的にみんなが消費を落としてその分貯蓄する傾向が高まりますので、日本の貯蓄総額としては右肩上がりです。なのでマイナスってことはないかな?とご自身の貯蓄額の推移を思い浮かべながら考えるのも手です。
5.平成23年過去問
第1問 GDPとGNPの関係
答え イ
GDPは国内総生産つまり日本国内で生産した分です。国内総所得で言い換えると日本国内にいるみんな所得の合計です。
一方、GNPは国民総生産つまり日本人が生産した分です。国内総所得で言い換えると日本人みんなの所得の合計です。
なのでエンゼルスの大谷選手やマリナーズのイチローの給料はGDPには入りませんが、GNPには入ります。逆に日本でプレイしている助っ人外人のクロマティやカブレラの給料はGDPには入りますが、GNPには入りません。例えば彼らの給料を調整してやればGNPからGDPへの変換が可能です。
GNPから大谷の給料を引いて、クロマティの給料を足してやればGDPになりますね。
要素所得というのは給料所得と考えてOKです。企業の営業利益なんかも要素所得です(いわば企業への給料所得です)。
第2問 GDP成長率推移
答え エ
ア ✕
物価が上昇しているのは正しいです。名目GDPが実質GDPより多いのでそう判断出来ますが、経済成長しているなら普通物価は上がります(インフレーション)。物価が上がるなら貨幣価値は下がります。物価と貨幣価値はシーソーの関係にあります。もし1万円を持っているとして、目の前のコーラが100円から1億円に値上がりしたら、その1万円の貨幣価値はほぼゴミになるでしょう。迷ったときはオーバーに考えてみるといいです。
イ ✕
物価の上昇と経済不況が同時に起こるのはスタグフレーションあるいはコストプッシュインフレといいます。これは正しいですが、1970年前半のオイルショックは第2次ではなく第1次です。これはしょうもない問題ですね。
ウ ✕
1980年代に円高にはなりましたが、1970年代からも円高になってはいます。バブル経済は正しいです。アジア通貨危機は1997年ですので間違いです。(これも日本が不況に入った要因の一つです)。ただの年表の問題で微妙。。
エ 〇
2000年代以降はデフレです。デフレは実質債務や実質利子率が上昇します。日本で借金や金貸し屋が怖いイメージがあるのはこの為です。100万円を借りたとして、その借りた額自体は変わらなくとも、物価が下落すると貨幣価値が上昇するのでどんどんその100万円が重くなっていきます。金利も見た目の数字が低かったとしても貨幣価値自体が上がっていくので見た目以上に重くなります。
逆にインフレの世界を考えてみてください。100万円借りてても1年後に100倍にインフレしていたら100万円なんか1万円くらいの価値に目減りしているので借金もへっちゃらです。
オ ✕
問題文の式が間違っています。
名%-実%=物価(GDPデフレーター)です。これを展開すると名%=実%+物価(GDPデフレーター)になります。
6.平成25年過去問
第1問 若年失業率
答え ア
この手の問題でイやウにはほぼなりません。アかエで考えましょう。若者は失業しやすいです。それは学生卒業後にすぐに就職できなかったり、すぐに転職したりするからです。逆に高齢者は転職する意欲が減退したり、引退後はそもそも労働人口としてカウントされなくなります。日本が不況になって1998年~2005年頃まで就職氷河期と呼ばれていた時代を思い出すと分かったかもしれません。
若者の失業率はどこの国でも高いですが、近年の日本は少子化で酷い人手不足となり若者の失業率の割合はかなり低くなっています。ちなみにニートは労働人口に入っていないので失業者にカウントされません。(実態との乖離があります)
第2問 需給ギャップ
答え イ
需給ギャップは需要と供給の差で求めます。その需要と供給の定義をどうみるかという問題でした。
MAX80杯のラーメンを作れる店で客が100人来たら20のインフレギャップです。
MAX80枚のラーメンを作れる店で客が60人しか来なかったらデフレギャップです。
需要がaとcのどちらかですが、需要は実際のGDPでみます。つまり実際の注文量です。cのように来てもいない皮算用の数字(幻の注文)は需要ではありません。
一方供給面はbかdですが、bはフルマックスの供給可能量で、dは現実的な供給可能量です。供給面も現実的な生産量で計算されます。従ってdが正解です。
以下蛇足
しかしこの計算方法は日本の経済を考える上で大きなミスリードを与えます。
上のように客が60人しか来ないラーメン屋であれば、いずれバイトや席数や材料を減らし、供給量を60に抑えていくでしょう。
そうすると現実的な供給可能量は減少し、デフレギャップがなくなってしまいます。
つまりデフレによる規模の縮小によりデフレギャップが埋まってしまうのです。すると「日本はデフレはない」と言うことができ、政府もデフレ政策(景気刺激政策)をしなくてよいことになります。
さらにデフレギャップがなければ、供給量を上げる、あるいは生産性を上げる事で経済成長を促すことが出来るなどと需要を無視した意見も増えてくることになります。
例えば貿易の自由化や労働規制の緩和です。労働の自由化により供給量を上げることが出来ます。ただしそれによって日本の賃金は下がり続けデフレが深刻化することになりました。その裏で人材派遣業はがっぽり儲けることが出来ました。
昔の日本の供給量はbで計算されていたかと思います。本来は需給ギャップを正しく計算するために潜在GDP(フルマックス供給可能量)はbであるべきでしょう。
これをいつしかdに統計方法を変えた人間がいるわけです。
その人物は大手人材派遣企業の創業者です。
なかなか闇深い過去問です。
7.平成26年過去問
第1問 国内総生産の所得割合
答え ア
このパターンはbやcではないです。bと解答して「残念cでしたー!」って言われても腹落ちしませんよね。
GDPを所得面から見ると全員(国民、企業、国)の所得の合計ですが、やはり我々の給料の額が一番でかいです。国の所得とは関税収入ですね(補助金はマイナス)。
企業の付加価値額と並べて考える事が出来ます。
企業の付加価値額は、
人件費+営業利益+減価償却費(+その他)なのでGDPの各項目とほぼ一致します。
企業も基本的にもっとも付加価値の中の割合を占めているのは人件費です。
第2問 設備DIと貸出DI
答え ウ
DI(Diffusion Index)とはアンケート結果みたいなもんです。
設備投資は現在、過剰ですか?不足ですか?と聞いて「過剰と答えた:30人」「不足と答えた:10人」となればDI値(過剰-不足)は20となります。
このグラフでみるべきポイントはもちろんリーマンショック期です。
設備に関してはリーマンショックの不況期であれば当然「過剰」と答えた会社が多かったでしょう。
貸出判断でいくと「厳しい」と答えた銀行が多かったでしょう。
問題はどっちが大企業でどっちが中小企業かですが、銀行が貸出判断を早めに緩めたのはもちろん大企業でしょう。
なのでaが大企業、bが中小企業です。
第3問 アメリカと欧州
答え イ
消費が良いのは景気が良い方なのでアメリカ。
失業率が高いのは景気が悪い方なので欧州。
基礎知識で解けるサービス問題です。
8.平成27年過去問
第1問 歳入割合
答え エ
これは2013年限定の時事問題なので覚えなくていいです。
2022年の歳入割合はこのようになっています↓
(財務省データ)
一般会計でみると税収6割、国債3割5分といった感じです。大体こんなもんです。
2013年はかなり国債支出を吹かしたので半々くらいだったみたいです。凄い。
第2問 日本の金融資産のBS
答え ア
まず日本国内で一番資産を持っているのは家計です。みんな貯金などがあります。(全員が借金の方が多いってことはあり得ないですよね。ローンで家を買ったとしても家の資産があります)ですのでaが家計です。
次に負債側で企業と政府がb,cどっちなのかですが、政府の負債(いわゆる国の借金と言われる)がどんどん膨らんでる~みたいな話は聞いたことがあると思います。
ですのでcが政府です。
※一般政府とは中央政府と地方行政を全部合わせたやつです。
ということでbが企業です。デフレ下では借金は不利なのでみんな借金を返そうとします。「無借金経営」がもてはやされてますよね。企業の負債は減っていってます。
これをみればわかるように資産と負債は表裏一体です。企業や政府が借金を返済するとその反面、我々家計の資産が減ります。政府や企業が負債を増やすと我々の資産が増えます。質量保存の法則のようなものです。
企業が借金を減らしていく中で、政府が負債を減らしていくなんてことは国民経済においてあり得ません。そんな国はどこにもありません。国民を貧困化したいのであれば別ですが…。日本は不思議ながらそれを目指しています。
ちなみに海外の項目ですが、これが国のBSでいうと「純資産」にあたります。
対外純資産といい400兆円くらいあります。日本は30年以上世界一の対外純資産国です。日本は世界一の借金大国ではなく世界一の金持ち国家です。
国の資産や負債と政府の資産や負債は切り分けて考えないといけません。
9.平成28年過去問
第1問 アメリカと日本
答え イ
左のグラフ
GDPが上がっているのがアメリカ、微妙なのが日本です。
GDPは国内総生産ですが、一人当たり実質GDPというのは真の意味でその国の豊かさを示します。仮にGDPが2倍に増えていても人口が3倍に増えていると一人当たりの収入は減ってますしね。また名目ではなく物価も考慮した実質で考えるとより現実に近いです。
右のグラフ
GDPデフレーター(物価)が下がっているのがデフレの日本です。上がっているのが普通に経済成長しているアメリカです。サービス問題でした。
第2問 税収の内訳
答え イ
階段式に上がっているcが消費税です。1997年に3→5%、2014年に5→8%、2019年に8→10%になりました。特徴として景気の変動を受けずに常に額が安定していることです。
好景気でも不景気でも赤字でも黒字でも根こそぎとるのが消費税です。
税とは、その課税対象を抑制する効果があります。
消費税とはつまり「消費を抑制するための税金」です。
民間消費がメインの日本経済にとって非常に負の影響がある逆累進性のある税金です。
逆累進性とは、金持ちに優しく貧乏人に厳しいということです。
金持ちでも貧乏人でも等しく平等に金を徴収するというのは消費金額率の違いから公平ではありません。
消費税がわかれば答えは導けるようになっていますが、バブル崩壊やリーマンショックで税収の下落幅が大きいところから、bが法人税であることがわかります。
ちなみに2022年の税収金額はさらに増えていて以下です。
所得税 20.4兆円
法人税 13.3兆円
消費税 21.6兆円
その他税 9.8兆円(相続税、固定資産税、酒税等)
10.平成29年過去問
第1問 失業率の推移
答え ア
失業率が基本的に低い国が日本です。(cが日本)
従業員を守る日本型経営の企業や雇用調整助成金の影響は強いです。
また「どうせ…良い条件の会社なんてないよな…」と就職をあきらめてる人は失業者に入りません。ニートも入りませんので日本は現実より失業率が低めにでる傾向はあります。
あとは景気のよくないEUがaであることがわければ解けます。
アメリカはリーマンショックの影響が大きかったですが、その後の経済政策がうまくいって失業率はかなり改善していきました。
第2問 経常収支
答え ウ
日本の貿易は赤字や黒字を行ったり来たりしています(b)。貿易・サービスのサービスとは観光などです。外国人観光客が国内でお金を落としていくのも外貨を稼ぐことになるので輸出の一種です。
貿易収支は、輸出-輸入がプラスであれば黒字になります。
ところで日本が貿易赤字になっても、「経常収支は黒字だから大丈夫」という論調を聞いたことはありませんか?その要因がaによるものです。
このaを第1次所得収支といいます。何かというと海外にある日系企業の「不労所得」です。デフレや円高下で大量の企業が海外に工場を作ったのはご存じの通りです。
ですので輸出は伸びなくなり、日本の雇用やGDPも伸びにくいという状況になりました。(海外進出した企業の利益は伸びるしその国のGDPには貢献します)
ところがその海外進出企業の株主は基本的に日本の企業です。そこからの配当金、あるいは不動産収入という不労所得が毎年何もせずとも大量に入ってきます。これが第1次所得収支です。この金額が非常に大きいです。貿易収支が赤字で経常収支が黒字とは、いわば営業利益(本業)が赤字だけども利息や賃借収入のような営業外収益があり経常利益は黒字である!みたいなもんです。
第2次所得収支は、簡単にいうと外国への寄付金です。
cは常にちょっとマイナスになってますね。
以下蛇足
ちなみに2011年~から貿易収支が大きく赤字になってますが、これは輸入が大量に増えたからです。主に石炭や天然ガスです。
震災後の原発停止により火力発電をフル稼働させるためのエネルギー輸入増ですね。
2014年は日本の第1次所得収支を持ってしても経常収支が赤字になりそうでした。
いよいよ国外に逃げないと日本は破綻する!と言っているような人もいましたがアメリカは常に100兆円くらい経常収支が赤字です。どこかの国が黒字であればどこかの国が赤字になります。それだけの話です。
日本の経常収支の黒字も元はと言えば日本国内の経済に成長余地がなく安い人件費を求めて海外に投資しまくった結果です。手放しで喜ぶような収支ではありません。
11.平成30年過去問
第1問 賃金と労働分配率
答え ウ
左のグラフ
伸びていないのが賃金ですね。
2013年頃(アベノミクス)から伸びているのが生産性です。名目GDPがなんやかんや(大企業の輸出利益や統計方法の変更等)で増えたので生産性は上がりました。
右のグラフ
労働分配率と営業利益ですが、わかりやすいのは営業利益の方です。リーマンショックでガクンと減っているのが営業利益です。またアベノミクスで営業利益は増加しました。
そしてよく問題になっているのは労働分配率です。労働分配率は企業の利益に対する賃金の支払い度合いです。100儲けて50賃金を払うと労働分配率は50%です。営業利益をがっつり儲けたにも関わらず賃金が同じ額しか支払わないとすると労働分配率は営業利益率と真逆の動きをすることになります。営業利益200で賃金50だと分配率は25%。営業利益50で賃金50だと分配率は100%です。
企業は安い労働力を利用して利益を叩き出し多額の配当金を資本家に支払うという構造に向かっていますが、とはいえ賃金を下手に上げにくいのも事実です。
2009年頃のように企業はリーマンショックで不況になって営業利益が出なくなっても賃金はしっかり支払います。(なので逆に分配率は向上する)
賃金が硬直的なのは従業員の雇用を守る日本型経営の良い側面もあるわけです。
第2問 各支出の推移
答え エ
一番目立つのはaの2008~2009年頃です。リーマンショックで一番落ちる割合が大きかったのは「投資支出」です。経済が急に曇りだしたときに設備投資するぞ!という人は基本いません。なので不況になると投資支出が激減します。
cがその時aとは逆の動きをしています。民間の低迷を支える存在が政府です。2013年だけは投資支出も政府支出も増加しています。アベノミクスでは2013年の初年度だけ財政支出を蒸かしたからです。(第2の矢)
一方bは不況に関わらずある程度一定です。いくら不況になっても食べなきゃいけないしで消費額はあまり変わりません。(なので消費税収は安定します)
12.令和元年過去問
第1問 債務対GDP比 各国比較
答え エ
日本の政府債務がGDPに対してでかすぎる!(借金大国!)みたいな話は聞いたことがあると思います。ですのでaが日本です。
問題はbとcがアメリカ、イタリアどっちなのかですが、欧州の中でも南欧は特に苦戦しているということを知っていれば解けるかもしれません。ポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシャなどは経済成長が鈍く失業率も高いです。
なので国の財政もあまりよくありません(ギリシャは破綻しましたね)
以下蛇足
これはEUや共通通貨であるユーロが原因です。
規制を撤廃しガチで欧州の国同士が勝負した場合、元々経済や工業が発達している国が勝ちます。ドイツです。日本でいうと東京みたいなもんです。勝って当たり前です。
で、普通そうなると負けている国は貨幣の価値が落ちていきます。でも貨幣価値が落ちると輸出するパワーは向上します(観光ビジネス含む)。それで経済回復を狙う事が出来ます。しかし、共通通貨であるとそのメカニズムは働きません。負け組は一生負け組のままです。しかも自国で通貨(ユーロ)を発行できないので、財政政策や金融政策も自由に打てません。財政が悪化するのは必然なのです。(イギリスがユーロに加盟せず、EUを脱退した理由がなんとなくわかるでしょうか)
ちなみに日本の財政は問題ありません。重要なことは債務額でも債務割合でもありません。ギリシャとはまったく前提が異なります。これは財務省ですら認めていることです。
第2問 中国の輸出入
答え ウ
日米欧ASEANで比較するとさすがに日本の経済規模は小さくなります。
日本がcであることはわかるかもしれません。
EUとアメリカがどっちがどっちなのかが問題ですが、aの国を見てみると中国はめちゃくちゃ売りつけていますが、あまり買ってはいません。ということはaの国は中国に対して貿易赤字が大きく、普通怒るでしょう。
実際に中国に対して怒っている国がありましたよね。アメリカです。(トランプ大統領の関税政策など)
残りのbがEUです。
13.令和2年過去問
第1問 政策金利
答え イ
とにかくずっと金利が低いaが日本です。
不況の国は、政府は金利を低くして投資を増やそうとします。
企業は、金を返済しようとして誰も借りなくなるので銀行は金利を下げます。
また銀行も貸出先がなくなり債券を買って運用するしかなく金利が下がります。
なんせ金利が下がります。(本当に経済破綻するなら金利は上がります)
景気が良くなってきたので少し景気を冷やそうと利上げしているのがcのアメリカです。
この時の欧州はまだ景気がよろしくないので金利は下げたままです(b)。
第2問 日本の輸出入
答え エ
まず米中韓で最も経済規模が低い国がCだろうと予測できます。これが韓国です。
輸出はアメリカと中国が都度入れ替わったりして判定が難しいです。
しかし輸入に関しては圧倒的にある国が多いです。食品、服、家電、通信機器、日用品など身の回り物のものが中国品ばかりであることに気付きます。iPhoneでさえ中国で生産されていますので中国から輸入しています。
14.令和3年過去問
第1問 コロナ時の経済成長推移
答え イ
コロナウイルスの影響問題です。コロナが中国から発生したことも踏まえると、いち早く影響を受けたcが中国です。
その後コロナは欧州で激しく猛威を振るいました。大きく落ち込んだaがイギリスになります。
bが日本ですが、もう一つヒントがあります。2019年の第4QからbだけちょこっとGDPが落ちているのがわかります。日本だけコロナ前から経済がマイナスとなっていました。これは消費税8%→10%に上がったタイミングです。
第2問 国債保有者の推移
答え エ
まず圧倒的に保有率が少ないcが個人です。個人向け国債も販売されていますがあまり持ってないですよね?持っていたとしても額もしれているはずです。
aとbが銀行と中央銀行のどちらかです。保有割合をみるとアベノミクス以降にbが保有している国債をaが買い取っていると読み取れます。この額は実に400兆円にも及びます。400兆円の買い物が出来る存在はこの世で一つしかありません。日本銀行(中央銀行)です。
中央銀行が市中の国債を買い取って世の中に貨幣を供給することを買いオペレーションといいます。別の言い方をすると金融緩和、量的緩和、アベノミクス第1の矢、黒田バズーカなどです。
貨幣の量が増えることで貨幣価値を下落させデフレから脱却しようという意図でした。ただしいまいちな効果となっています。(しないよりはマシでしたが)
以下蛇足
ここが経済学者、マネタリスト、エコノミストが大きな勘違いをしていた点です。民間銀行が日銀の口座にいくら大量に預金を積み上げたところで我々の経済圏には貨幣は供給されません。
誰かが消費を増やしたり、企業が銀行からお金を借り入れることで初めて市中に本当の意味で貨幣が供給されるからです。経済学者はそれでも市場が「インフレを期待」することによって投資が増えるはずだと考えました。その仮説自体は否定しませんが、結果として人類史上初の壮大な実験は「効果が薄い」ことをアベノミクスが証明することになりました。
IS-LM曲線でいうと流動性の罠状態にあるので金融緩和は効果が薄いのは元々わかっていたことですが、それ以前、マネタリーベースとマネーストックの経路の違いや「貨幣そのもの」の理解がまだ足りていないのだと思われます。
15.令和4年過去問
第1問 ジニ係数
答え ア
ジニ係数の問題です。
ジニ係数とはその国の貧困格差などを示す度合です。
ローレンツ曲線(省略)というものを用いて数字を求めます。(0~1の値を取る)
0だと全く格差のない状態です。全体の収入が100だとして10人が10ずつ収入あるような状態です。
1だと格差が極大の状態です。全体の収入が100で1人が100、他9人が0みたいな状態です。
a 正
所得再分配前の所得格差とはグラフでいうと白い棒グラフの当初所得ジニ係数ですね。0.4くらいだったのが、0.5以上に上がっていっています。これは所得格差が拡大しているということです。
b 正
改善度というグラフが上がっていますので単純にその通りです。所得格差は広がっていますが、再分配後のジニ係数(黒い棒グラフ)は上がっていませんのでその差分が改善度ということです。これは税金や社会保障政策により元々の所得格差をうまく各所得層に振り分けていますよ~。ってことですね。
以下蛇足
これにより、「アベノミクスで金融資産を持っているものばかりが儲かって一般市民は所得が増えていない!」という主張に対して、「いやいや所得再分配後のジニ係数は上がってないよ。知らないの?笑」という反論が使えるわけです。
ただしこれは一方で正しくもあり間違ってもいます。労働規制の緩和や労働移民の受け入れやグローバル化といった自由化はマクロ的に格差を拡大させます。これは資本主義経済であれば避けることが出来ない構造です。ところが日本の場合、少子高齢化により社会保障費の負担が上がり、願わずとも所得再分配の機能が強化されています。本当の意味でのジニ係数を計測するには、世代間格差、世帯間格差といった多くのパラメータをごっちゃにせず分離しなければなりませんがこれはなかなかに手間と精度が難しいです。あと国(というか政治家は)、格差が拡大している、賃金が下がっている、失業者が増えている、GDPが減っている、ということは自らの実績の汚点となるので基本的に言いたくありません。表向きは明るみになりませんが、統計の計算手法を都合良く変更するなんてこともよくあることです。
c 誤
グラフ上そんなことはないです。
ジニ係数や所得再分配といった意味がわからなくてもグラフを読み解くことが出来れば正解を導けたかもしれません。
第2問 GDP成長率の寄与度
答え ア
まずコロナショックでGDPが落ち込んでいることがわかります。
経済が落ち込んだ時にプラスになるよう支える存在は「政府」です。政府にしか出来ないことであり、それが政府の仕事です。ですのでaは公需です。(公共事業や給付金だと思います)外国と比べるとしょぼい対応でしたが日本ではいつものことです。
個人消費と設備投資がb、cどっちかが意外と難しいです。
例えば平成30年の支出面の推移では、リーマンショックに一番落ち込む“率”が大きかったのは「投資支出a」でした。※消費支出bの“率”はそれほど落ちていない<
だけども思いだして欲しいのは、こちらのグラフです。日本の経済において圧倒的にGDPの中核を占めるのは民間消費の方です。
単純に下落率でみると設備投資の方が落ち込んでいますが、GDPへの影響度(寄与度)が大きいのは個人消費の落ち込みの方になります。
※コロナショックではリーマンショックと異なり、外出規制や旅行規制で消費活動自体も割と落ちたという環境の違いもあります。
過去問総ざらいいかがだったでしょうか?
助っ人外人が古すぎる
なお解説は全てオリジナルになりますが、特定の政治的意図や思想は一切ありませんので気を悪くされた方がいればごめんなさい。
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