こんにちは燦です。
今年も実務補習の季節ですね!
楽しいけどなかなか大変じゃよね。
診断士試験に合格し、これから実務を経験していくにあたり知っておくべきことがあります。
ほう。何だろうか?
今のままじゃ全然ダメだということです。
何をぬかすか!?こやつ!
早速見ていきましょう!
この記事のメリット
・現実に立ちはだかる壁を知る
・その心構えと対策について知っておく
※(一社)中小企業戦略研究所で行なった実務従事研修(せたけん先生)からピックアップしています。
【第1の壁】
試験での高得点解答は役に立たない?
例えば2次筆記試験では、次のような問題がありました。
平成29年度 事例Ⅱ 第3問
地域内の中小建築業と連携しながら、シルバー世代の顧客生涯価値を高めるための施策について、120字以内で助言せよ。
それに対する模範解答は次のようなものになっています。
地域内の中小建築業と連携し、介護ベッドを品揃え、介護のための改装の際に並行して購入を促す。また、定期的な点検のための訪問サービスを提供し、併せて日用品の配達サービスを実施、顧客との関係性強化を図り、買替喚起対応や、継続的な日用品販売で生涯価値向上。
(引用:「ふぞろいな答案分析5」より)
キーワードが散りばめられており、高得点を期待できそうです。しかし実務においてはこれが高成果に繋がるとは限りません。
上記の解答を実現するには、次のようなアクションが必要です。
①建築業者との連携
②介護ベッドの品揃え
③ベッドの営業活動
④訪問サービスの実施
⑤配達サービスの実施
⑥顧客との関係性強化
⑦買換喚起の対応
⑧継続的な日用品販売
やること多いな…。
リアルでは、これらのアクションについて
・誰が?
・どれから?
・いつから?
・どうやって?
遂行していくかの具体策が必要となります。
さらに小規模事業者となると、お金の制約、時間の制約、人材の制約が重くのしかかってきます。じっくり時間とお金を掛けて数年後に華開くなんて施策はまず実行不可能です。
例えば日用品の配達サービス一つとっても
・開始時期
・担当責任者
・対象地域
・配送便の手配、契約、調達
・配送者のシフト体制
・地図アプリの導入
・提供方法
・サービスの案内の方法
・チラシの制作
・価格設定
・日用品の選択、調達、保管条件
・テスト販売 などなど
取り組むべき内容はたくさんあります。
事業者さんの規模から制約条件を踏まえて、実行可能な具体案を突き詰められるようにしましょう!
【第2の壁】
支援先以上の専門家になれるか?
まず当たり前の話ですが、事業者さんの事業はその社長さんがこの世で一番詳しいです。毎日事業のことを四六時中本気で考えて、寝る間も惜しんで行動しています。
そんな事業者さんに対して、業界のついて全くの素人で、ましてや経営もしたことのない人間が一体何を助言できるというのでしょうか。
これがほんとに謎過ぎる…。
もちろん我々は、経営学、経済学、経営法務、IT知識、財務・会計などが頭入っており、かつ論理的思考や課題の抽出方法も身に付けてきました。これらは大きな武器ではあります。ですが付け焼刃の知識だけで現場で戦えるほど甘くはないのも事実です。
最も我々が活かせる能力の一つは、学習・習得する意欲やスピードです。すなわち事業者さんに提供できる価値は、まずは事前準備です。
事前準備をしていない、何一つ自分の業界のこと知ろうともしていない人に、そもそも悩みを打ち明けてくれるでしょうか?いや打ち明けてくれません。そうなれば試験でいうならば与件文すら与えられずに問題を解こうとするようなものです。無理です。
ただし新米診断士が業界についての知識や経験が足りないことは事業者さん側も百も承知です。わからないことがダメなのではなく、悩みを話してもらえるような印象を対面初日で感じてもらえるかどうかです。
業界についてたまたまめちゃくちゃ詳しいこともあるでしょう。だけど上から目線の偉そうな人と、業界については素人だが事前に勉強してきて一所懸命な人、どちらに相談したくなるか?という話です。
というわけで事前準備リストです。
① 業界研究
業種別審査事典、会社四季報、中小企業白書、今日からモノ知りシリーズ等
② クライアント研究
HP、SNS、口コミサイト、求人サイト
BtoCのサービス事業者さんであれば、実際のそのサービスを利用してみるという手もよくあります。
③ 競合研究
業種や業態の競合、地域の競合、大手事業者の戦略など。
重要な点は、「〇〇が足りない」「〇〇が負けている」といった弱みよりも、「〇〇がオリジナル技術」「〇〇がすごい」といった強みを見出すことです。
④ 顧客研究
事業者さんの顧客はどのような属性の人たちなのか。ユーザーはどのような悩みを持ってそのサービスの購入に至っているのか。購買行動や消費行動からみた顧客の代替品は何なのかなどを把握しておく。
仮に事業者さんの企業に入社(バーチャル入社)したとして、即戦力で仕事が出来るレベルまで突き詰めましょう!
【第3の壁】
良質な提案につながるヒアリングができるか
実務補習や実務従事においては基本的にヒアリングのチャンスは最初の1回のみです。ヒアリングの目的は、事業者さんの理想と現状についての認識を合わせる事。
限られた時間でヒアリングを行うには、事前準備、課題仮説の設定、ヒアリング内容の整理、アイスブレイクなどが重要です。
① 仮説の設定
質問の事前準備、ロールプレイング、課題の仮説を立てておくことでヒアリングの時間を有効に使い、ヒアリングの優先順位を決める事ができます。ただし仮説はあくまで仮説です。
問題が既に顕在化している場合は、事前準備した仮説のことは忘れその問題点に集中しましょう。
問題を感じているがその原因が分かっていない場合は、事実状況の確認や原因究明に集中しましょう。
なんとなく漠然とした不安をいだいている場合は、事実状況の確認に集中しましょう。
② やってはいけないこと
上述の話は、ヒアリングの目的とすべきことでしたが相手は人間です。良質なヒアリングを行うために次のようなことには注意しましょう。
・いきなり本題に入る
・質問リストの上から順番に聞いていく
・相手の話を遮って質問してしまう
・次に何を聞こうかと考えながら聞く
・質問毎に担当を決めて、質問者を入替ながら聞く
(実務補習等ではこうならざる得ないシーンもあります)
・PCや紙に注目して、相手の目を見て話を聞いていない
・試験で習った専門用語を多用してしまう
・詳細に入れず抽象的な質問で終わってしまう
・相手のペースに引き込まれて聞くべきことが聞けずに終わってしまう
③ アイスブレイク
そもそも初対面の相手に自社の悩みを相談するのはハードルがあります。ましてや財務諸表などは自分の年収をいきなり開示するようなものです。聞いた質問に答えてくれるかもわかりませんし、それが真実かもわかりません。
ですので出来るだけ話しやすい雰囲気や信頼感を醸成する必要があります。ヒアリング時の張り詰めた緊張の空気を緩和するアイスブレイクは重要なのです。
あの政党ってクソですよね。
絶対あかんやろ…。
ここで使えるのが事前準備で仕入れてきた業界に関する情報や、事業者さんに関する情報です。業界の最新ニュースや、事業者さんのSNS投稿、ブログ記事、サービスを使ってみた感想などをいわれると少し胸襟を開いてくれる可能性は高いです。
④ 聞く・聞く・聞く
ヒアリングはとにかく聞くことです。間違ってもこちらが長々ポエムを語るようなことがあってはなりません。自分が聞きたいこと聞くのではなく、相手が話したいことを聞きます。事業者さんがあまり話好きではないこともあるでしょう。事情聴取のようにならず、流れるような会話をしながら本音の課題を抽出するのは本来は相当な訓練が必要です。気持ちよく話をしてもらうことが重要ですが、話が脱線しないように軌道修正する微調整も求められます。
コミュニケーションのコツは、相手の話に共感して、オウム返して、なぜそう思ったのかを掘り下げる事です。あと苦労話や上手くいった話など過去の話はみんな話すのが得意なのでたくさん話してくれます。
⑤ 課題の認識合わせ
打ち合わせの最後には必ず次のことをすり合わせしておきましょう。
・今回最も解決した問題は何か
・理想としてどのような状態になりたいか
・現状どのような取り組みをし、どのような状況か
・いつの時点で、どのような状況にしたいか
相手の話の聞き手に徹し、理想の状態の認識を合わせましょう!
【第4の壁】
「今日から何する」が具体的にわかる提案か
つまり〇〇という施策が有効です!
なるほど!で、どうやってやればいいの?
現状の把握
⇓
問題点の抽出
⇓
原因の分析
⇓
課題の設定
⇓
解決策の提示(何のために、誰が、いつ、何を)
ここまでが2次筆記試験でしたが、実務ではこの先が大事です。
「今日から何をする」が明確にわかれば最高です。
その為には…
① GOALから逆算で考える
理想のGOALからその為にはどうするかを逆算していく(左側)
そしてその順に具体的な行動を落とし込んでいく(右側)
② 自分でも実績のある些細な取り組み
小規模事業者の場合は、新設備の購入、人事制度の設計、自動ソフトの導入、大々的な広告などと言われてもやはり厳しいです。提案する側が自ら取り組んだことのある(私もこれをやって上手くいきました的な)実績のある提案の方が断然伝わります。例えばSNSの具体的な運用事例、ブログ制作、無料あるいは少額の有益ツールの活用などです。
③ リソースの捻出
事業者さんは、やるべきことはわかったとしても実行に移すにはまだハードルがたくさんあります。
・実行できる人がいない
・実行できる設備やツールがわからない
・実行するためのお金がない
・実行するための時間がない
特に最後の時間のリソースが基本足りません。あれもやってこれもやってこんな問題も抱えているのにさらにまだやるのか…となるでしょう。
重要なことは何をやめるか。です。
決断とは「断つことを決めること」
必要な時間を算出して、業務を分類し、ECRSの原則で業務効率化を図ります。
実効性の高い、コスパ・タイパの高い具体策が必要です。
※ECRS: 無くせないか、一緒に出来ないか、順番を変えられないか、簡素化出来ないか の頭文字。この順番でタスクの効率化を考えるフレームワーク。
④ 最後のハードル
どれだけ良質で合理的で効果的な提案をしたとしても、事業者さんあるいはその従業員に、変化を嫌う心理的ハードルがあります。
これを解消するにはどんな小さなことでもいいので成功体験を積むことです。
自信の行動が成果に表れてくれば、事業者さんでの信頼度、モチベーション、実行スピードがどんどん増していきます。
ですので即効性のある施策や緊急度の高い問題解決から優先的に取り組んでいく必要もあるでしょう。
事業者さんが「これならできる」と思える具体的かつ効果の出る施策を提案しましょう!
まとめ
診断士と事業者さんとの認識ギャップを把握し、実務に関しての取り組み姿勢を学びました。
試験での高得点解答と実務との乖離:
高得点解答はキーワードが揃っていますが、実務ではそのままの施策が有効・実行できるとは限りません。実際には多くの実務的課題や制約があり、解決には具体的なアクションプランが必要です。
専門家としての役割:
専門家としての役割を果たすためには、事前の業界研究やクライアント研究が重要です。事業そのものへの想いや様々な事情は事業者より詳しく知ることはできませんが、きっと別の角度からは専門家として助言出来ることがあるはずです。謙虚さと誠実さを持ってアプローチしましょう。
良質な提案を導くヒアリング:
ヒアリングは、事前準備とアイスブレイクが重要です。相手の話を聞き、共感し、問題点や課題を抽出し、解決策を提示するための情報を収集します。その際、相手のペースに合わせてコミュニケーションを取ることが大切です。
具体的な行動への導き:
最後に、提案された施策が具体的かつ実行可能であることが重要です。目標から逆算して行動計画を立て、リソースの捻出やハードルの克服を考慮し、実行に移すための準備を行いましょう。
実務従事プログラムのご案内はこちら▼
なかなか大変だなぁ。
そりゃそうでしょ。
でもやる気がわいてきたぞ。もっと詳しい話を聞かせてくれるか?
それは引用原作元である高島先生のこちらの本を読んでください!!
名刺はラクスル100枚499円で十分
▼その他おすすめ書籍