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2次試験知識 事例Ⅲその⑤ QCD・経営戦略・販路開拓

 

こんにちは燦です。
こちらはYouTubeの知識インプットシリーズです。

今回は事例Ⅲじゃな。製造業は奥が深いぞ。

聞くだけでなんとなく各事例の雰囲気を味わう動画+ブログ記事として投稿しています。

事例Ⅲを習得するためにもしっかり覚えないとな。

 

事例Ⅳの攻略解説シリーズはこちらのページをご確認ください。
【YouTube】事例Ⅳ 攻略法解説シリーズ 

事例Ⅳの過去問解説シリーズはこちらのページをご確認ください。
【YouTube】事例Ⅳ 過去問解説シリーズ

 

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◆目次◆

 

事例Ⅲ-⑤ QCD・経営戦略・販路開拓

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5回シリーズの構成

  1. 生産管理系の用語
  2. 生産効率系の用語
  3. デジタル系の用語
  4. 人材育成系の用語
  5. 戦略成長系の用語 ← 今回これ!

今回は戦略成長系用語になります。最終回です。用語説明というよりかは、考え方に対するフレームワークや切り口の解説になります。第1回目から第4回目までは製造業や生産現場における改善の話が中心でしたが、最後は戦略ワードや経営戦略系の話になります。

 

事例Ⅲにおける戦略問題の位置づけ

1分で理解する最重要ポイント

事例Ⅲで言うと第1問と第5問がここに関わってきます。意外と得点の大きな部分を占める話になります。

  • 第1問:内部分析(強み・弱みを述べよう)
  • 第5問:これからの経営戦略をどうしていくか

第1問:内部分析で注意すべき点

比較的イージーな問題なので確実に取っていきたいところです。注意点は以下の通りです。

  • 生産面と営業面の2つがある:製造業だからといって生産面だけを見てしまうケースがあるが、営業面や経営面(顧客に依存している、提案営業力が強い等)も重要
  • 設問の制約条件をしっかり確認:「生産面について」だけ書けという場合もある
  • 厳密には3つの面:生産面、技術面、営業面の3点で見れば間違いない

第1問と第5問の関係

事例Ⅲは事例Ⅱとパターンが少し違います。

  • 事例Ⅱ:弱みで挙げた点は弱みのままでしょうがない
  • 事例Ⅲ:弱みで挙げた点を改善していって、最後は強みに変えてそれを今後の経営戦略にも生かしていく
  • 第1問で上げた弱みは第2問で改善していって、第5問で生かしていくというパターンがある

 

成長戦略の2つの方向性

最終問題で「さらなる成長を目指すためにどうしていきましょうか」という問題が結構出てきます。その時の大きな方向性は2つあります。

方向性1:下請けをどうしていくか

C社の場合、大手メーカーや大手企業から仕事を受けて下請け的に加工なり製造をしているケースが多いです。

路線 内容 特徴
下請け脱却路線 大手の元請け会社に依存せず、自分で食べていける新しい仕事を見つける 自社ブランドでやっていく方向性
下請け強化路線 最近新しく始まった大手取引先、新しい業界との取引規模をさらに深めていく 売上高を伸ばせる、別の市場に参入できる。必ずしも下請けを完全脱却する必要はない

方向性2:アンゾフの成長戦略

新商品を開発していくのか、新市場を開拓していくのかという路線です。

戦略 内容 事例Ⅲでの適用
既存浸透戦略 既存商品×既存市場 未来に向けての戦略としては少し弱い
新商品開発 新商品×既存市場 基本的にはどちらかに絞る(製造業はお家芸業界なので片方が結構重い)
新市場開拓 既存商品×新市場 基本的にはどちらかに絞る
多角化 新商品×新市場 同時にやるのはハードルが高すぎる

 

QCD分析の切り口

成長戦略を考えるにあたって、どういった観点で分析していけばいいかという切り口として、QCDがよく上げられます。

Q(Quality:品質・商品力)

製造業で言うQCDのQは品質だけでなく商品全般のことを示すことが多いです。

  • 狭義の品質:求められたスペックからぶれない(品質が高い=スペックに対してぶれない)
  • 広義のQ(商品力全般):機能性能、品質、見た目、ブランドなど商品に関わるもの全てを含む

商品力が強みのC社は非常に多い

商品力を高めていく方向性としては以下のものがあります。

  • 新商品開発:顧客に新たな価値を届けていく
  • 提案型営業:顧客にカスタマイズして提案する。顧客にとってカスタムフィットしていく
  • 専門性の高さ:C社が持っている特有の機械や技術。C社にしかできないような専門性のあるプロダクトを顧客に提案していく

C(Cost:コスト・収益力)

お金全般に関わる話を広く捉えます。収益力を上げていくための方向性です。

中小企業における価格競争力の考え方

  • 製造業においても価格競争力は非常に重要
  • しかし、価格を下げて注文量を増やすのは中小企業の施策戦略にはならない
  • とはいえ、大手より高くても許されるわけではない
  • 基本的に中小企業でしか作れないものはあまりない(大手でも作れてしまう)
  • 市場の規模が小さいニッチなところに入れば、中小企業でしか作れないものもある

大手のコスト構造

  • 規模の経済はあるが、大手は割と高コスト体質
  • 工場が大きい、管理費が高い、給料が高い(固定費増加)
  • 研究開発費、研究棟などでコストがかかる
  • 大手自身も自社の高い固定費を維持するために割と高い値段で売っている
  • 大手メーカー営業が自らダンピングしに行くケースは少ない(圧倒的に引き合いが多く、ニッチなところは狙いに来ない)

中小企業製造業の実態

それなりのものをそれなりの品質で、早く顧客にカスタムフィットしながら比較的安い価格で届けていくという中小企業製造業が実際のところ多いです。

コストで収益力を上げる方向性

  • 価格を下げるのではない:コストダウンして収益力を上げていく
  • ロス削減・在庫削減・無駄削減:生産効率を上げて収益力を高める
  • 調達先・仕入れ先:自社の商品力がほぼ仕入れ品に関わっているケースもある。どこのメーカーのどんな材料を買っているか、どんな材料をカスタマイズして仕入れているかが物づくりの肝になる。仕入れ先を強みにする、調達先を増やす

VA/VE提案

顧客に対して価格を下げなくても提案できる方法です。

  • VA(Value Analysis:価値分析):既存の商品に対して代替品や代替プロセスを提案。同じ性能が示せるなら素材を変えても品質・機能・性能は変わらない。材料的に安くなるのでコストダウンできる
  • VE(Value Engineering:価値工学):これから作る新商品の設計段階から提案。今まで3工程でやっていたら1工程でできるような商品を一緒に開発していく
  • 価格は上がるがトータルでコストダウン:価格は現状維持または上がるが、性能が上がることで顧客のタクトタイムが短くなる、歩留まりが上がる。トータルでコストダウンになる。自社の利益も上がるし顧客の利益も上がる、非常に良い提案

D(Delivery:納期対応力)

納期対応力に関しては、現状C社が苦手としているケースが多いです。

本来の中小企業の強み

  • 大手メーカーよりも納期対応力は速い
  • 小回りが効く、短納期対応している

C社で納期面が弱い理由

  • C社の場合、納期面が完璧だと問題があまり作れなくなる
  • 納期対応力が弱い会社が出てきやすい
  • 納期対応力を上げていくという問題構成・改善の方向性になる

納期対応力を上げることで得られるもの

  • 販売できる市場の可能性が広がる
  • 受注生産しかやってこなかったが、新しい取引先から見込み生産も要望されて見込み生産体制もできるようになる
  • 短納期で要望される、これまで行けてなかった業界にも参入できる
  • 生産管理システムを導入して顧客の看板方式にも対応できるようになる
  • 納期面が弱みだったが、それを強みとして別の顧客へアプローチできる

 

一貫生産体制の強み

QCD全てを強化してくれる方法として、一貫生産体制がよく出てきます。C社の強みでよく挙げられます。

Qの面(商品力)

  • 完成品まで出来上がった部品を作ってくれる
  • 顧客からしたら非常にメリットがある

Cの面(コスト)

  • いろんなところからパーツパーツで仕入れるよりも一貫で作ったものをドンと入れてくれた方が良い
  • 商品自体のコストが安くなるかもしれない
  • 管理コスト、調達管理コストが安くなる(顧客からしたら楽)

Dの面(納期)

  • 一貫生産のプロセスの間がC社の工場内で完結するのでリードタイムも短くなる
  • 自社で作って外注に運んで外注で塗装してから自社に戻してさらに組み立てると、リードタイムが長くなる
  • 自社で一貫で作れるので3日でできるという提案もできる

一貫生産体制はQCDにおいて非常に有効な手段なので、C社の非常に有効な強みになります。

 

成長のために強化すべき3つの要素

新商品開発なり新市場開拓なり、多くのC社がやはり強化していかないといけない点があります。

1. 営業力

とにかくよく出てくる論点なので要チェックです。

C社に営業力が弱い理由

  • 下請けの仕事をしていたので、自分で仕事を取ってこなくても元請けから仕事をいただける(これが下請けの最大のメリット)
  • これに依存していたので営業力が低い、営業があまり必要なかった

営業力が100%必要になる場面

  • 脱下請けしていく
  • 提案型営業に力を入れていく
  • 新市場に進出する
  • 自社製品を販売する

営業力強化しないとこれらの新しい経営戦略展開は不可能です。

営業体制の整備

  • 営業部があって実際に営業する人がいるかどうか
  • 元々営業部と呼ばれる人たちがいるが配送しかしてなかった、御用聞き営業だけしていた → これは営業とは言わない(配達員や販売スタッフの役割)
  • 新しい顧客を獲得していくための営業体制が必要

具体的な営業活動

  • 現実的なアプローチ先
    • 業界のトップ企業は参入ハードルが高い(門前払い)
    • すでに交流のある取引先から営業をかけていくのが現実的
    • 身近な会社、取引先、過去に付き合いがあった取引先
    • 新しく始まった取引先と同じ業界・似たような業種の会社
  • 営業人員の育成
    • 営業経験を積む研修
    • セールストークを磨く
    • プレゼンの練習
    • 営業資料を整える
    • 社長と同行で育成
  • 展示会への出展
    • プッシュ型ではなくプル型で顧客に興味を持ってもらう
    • 名刺を集める
    • 名刺があればその後電話でコンタクトして、サイト訪問してセールスできる
  • ホームページの整備
    • ホームページを見て問い合わせがあるのはそこまで期待できない
    • 何かしらアプローチ・営業活動をかけた後でホームページを見られることが多い
    • 集客手段というよりは信頼性訴求のためにホームページを作る
    • 実績ができてくればホームページからの問い合わせも増える
    • Webの方も同時に強化していく

2. サービス力

受注活動や注文を受けて配送するまでの供給体制・運営体制が重要です。

  • 品質保証
  • 機械だったらメンテナンス対応
  • アフターサービス
  • 既存顧客フォロー

下請けでやっているとあまり必要なかったが、自社ブランドでやっていくとこの辺りが重要になります。

3. サプライチェーンマネジメント

自社の調達、製造、搬送から納品までの一連の供給体制の流れです。自社だけでなく他者とも連携していると強いという見方になります。

  • 商品力にも関わる
  • 納期対応力にも関わる
  • 事例Ⅱでも自社だけだと差別化しにくいが、他者とコラボすることで差別化が測れるパターンがある

製造業における他者連携の例

  • 同じ工業団地にいる別の技術と組み合わせて新しい一貫生産技術を作る
  • 物流体制・配送体制・倉庫体制など供給網をしっかり整える
  • デザイナーとコラボしてハイセンスなモニュメントを制作
  • 新しい商品組み合わせを作っていく

競争力強化、差別化を測っていくために有効な手段です。

 

投資意思決定の6つのポイント

事例Ⅲの最終問題は投資の意思決定をさせるような問題もたまに出てきます。「投資するべきですかしないべきですか?その理由を述べよう」という問題です。

採点の考え方

  • どちらが正解で、どちらが間違いで0点になるという問題ではない
  • どちらにしてもある程度の得点が入るのが今までの傾向
  • 書きやすい方を選べば良い
  • 根拠・理由のところがしっかり書ける方を選ぶ

判断の6つのポイント

ポイント 内容
1. 強み・シナジーを活かせるか 全然関係ないことをする、今までのC社の強みを生かせていないのは怪しい
2. 運営体制が整うか 機械だけ投資すれば供給体制が整うわけではない。受注システム、見込み生産の経験、配送体制、営業人員など製造以外の運営体制も確認
3. 需要の確実性はあるか 思いつき段階で工場を立てるのは相当リスクが高い。すでに注文が来ている、大手から具体的に設備投資の話が出ている。一過性ではなく継続して伸びていく仕事なのか
4. 人員は確保できるか 新規採用、社員の育成面が大丈夫か。投資する設備による(NC工作機など最新の機械なら自動化が進んでいて技術習得に苦労しないケースもある)
5. 顧客のリスクは分散されるか 元々X社に販売依存していたのに、さらにX社の依存度が高まるのは躊躇する。Y社で今までと全然違う業界の会社ならやった方が良い
6. そもそも投資しないといけないのか 収益を伸ばすのが第一目的で、設備投資は手段。設備投資しなくても収益を伸ばす手段が普通にあるケースもある(例:品質クレームが来ているならまず品質改善)。今目先で改善できることがあれば、まずはそっちに注力

与件文のヒント

与件文の中にヒントが書いてあるはずです。どういったヒントがあるかの例:

  • 社長の発言・経営の方針:「これから新工場を立てていこうと思っている」→ 投資やった方が良い後押し
  • 市場の要望:「市場は軽量化を求めています」→ 新しい設備なり新しい素材なりに投資する必要がある
  • 市場の動向:「このままだとどんどん先細りしていく」「この業界の顧客企業がどんどん海外に進出している」→ このまま行くとやばい
  • C社特有の課題:「X社に依存しているので、X社以外の会社やX社以外の業界に販売を伸ばしていきたい」
  • 他のリソース:人員の問題、お金の問題、資材調達の問題など資源確保問題なさそうな記述があれば投資する根拠になる

回答の構成

  1. 結論を述べる(投資すべきである/すべきでない)
  2. 理由を述べる(6つのポイントから根拠を並べる)

書きやすい方で書く。時間もありますから。

 

まとめ

内部分析(第1問)

  • 生産面、技術面、営業面の3つの面で見る
  • 設問の制約条件をしっかり確認
  • 第1問で上げた弱みは第2問で改善し、第5問で生かしていくパターンがある

成長戦略の方向性

  • 下請けをどうするか:脱却路線 or 強化路線
  • アンゾフの成長戦略:新商品開発 or 新市場開拓(基本的にはどちらかに絞る。多角化はハードルが高い)

QCD分析

  • Q(商品力):新商品開発、提案型営業、専門性の高さ
  • C(コスト・収益力):ロス削減、調達先強化、VA/VE提案
  • D(納期対応力):見込み生産体制、生産管理システム、新市場参入
  • 一貫生産体制:QCD全てを強化する

成長のために強化すべき要素

  • 営業力:営業体制整備、営業人員育成、展示会出展、ホームページ整備
  • サービス力:品質保証、メンテナンス対応、アフターサービス、既存顧客フォロー
  • サプライチェーンマネジメント:他者との連携による競争力強化・差別化

投資意思決定の6つのポイント

  1. 強み・シナジーを活かせるか
  2. 運営体制が整うか
  3. 需要の確実性はあるか
  4. 人員は確保できるか
  5. 顧客のリスクは分散されるか
  6. そもそも投資しないといけないのか

というわけで、今回は事例Ⅲの戦略成長系用語を解説しました。

第1問と第5問は意外と得点の大きな部分を占めますので、QCD分析の切り口や投資意思決定のポイントをしっかり押さえておきましょう。元々の強みを生かしつつ、克服した弱みをどうやって生かしていくかという視点で経営戦略を考えることが重要です。

これで5回シリーズは終了です。引き続き復習してみてください。

 

 

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